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2008年02月26日 (Tue)

幻灯忌憚

彼女には風が必要でした。
それから、美しい庭も。

彼女はとても美しかったのですが、道標となるものが何もなかったのです。
そして休まる家もありませんでした。

僕にはともだちが必要でした。
それから、たっぷりの愛情と、抱擁と信頼。
そして何より、許しと肯定が必要でした。

僕は情動と感情に満ちていましたが、支えとなるものが何もなかったのです。
たくさんのほほえみを知っていたのに、聞いて頷いてくれる人がどこにもいなかったのです。

僕らは出会い、半身になる筈でした。
けれど壮大な意志か魔力か…何者かによって出会いの機会を奪われたのです。

そうして、僕たちは永遠に出会うことなく、互いの人生を歩んで行きます。

彼女は永遠に風も庭もなく過ごしたのか。
それとも何か手近なもので代用したのか。

僕には代用するものもなく、様々なものは永遠に欠けたままでした。

今日、僕は死にます。

辛い想いや投げ掛けられた言葉は弱いこころに溜まり続け、誰にも解ってもらえないまま、蓄積し過ぎたのです。
口に出す言葉はいつも途切れて、胸に悪雲ばかりが滞納します。
そんなとき、死の準備が揃わないもどかしさに、何度も落胆したものでした。

けれど、今日は違う。
揃った準備は、僕の死を晴れやかにします。
しかし、万全に整った聖礼式の中で、ひとつ胸が痛むのです。

出会わなかった彼女は、果たしてしあわせだろうか。

僕に出会えなかったおかげで、泣き暮れてはいないだろうか。

死の淵で想うのは彼女のことだけです。
どうか、誰か僕の代わりを見つけて、それなりにしあわせでいてください。
もしや悲しみに苛まれ、僕より先に自害してはいないだろうか……

僕は出会わなかった彼女に告げます。
来世ではきっと出会えると。

そして僕たちの出会いを消し去った悪しきものに呪縛の言葉を。

最後の息をした瞬間。
僕が見たのは彼女の姿でした。
僕の幻想の…彼女の姿でした。

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2008年02月19日 (Tue)

誰も知らない

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誰も知らない

僕の傷
離された手
代わりに埋まった席

誰も知らない
僕の惨めな略図を
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2008年02月15日 (Fri)

月だけは離れずに

走る電車
窓辺で夜空を見上げる僕
景色は流れて行き
移り変わる
電車は動き続けるのに
月だけは
なぜ
付いて来るんだろう
単調な動きを繰り返して
決して窓枠から消えずに
ああ
きみは僕の味方だ
美しい半月
いつまでも
僕の目に映っていておくれ

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2008年02月12日 (Tue)

かえりみち。

ひとりのよみち。
ほしがないのでさみしいです。
むしのこえがともだちです。

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2008年01月21日 (Mon)

忘却の腑

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僕を思い出して
あたたかな風が 不意に目先を横切るように
僕を思い出して
木の葉が舞い 足跡の上に降り散るように
僕を思い出して
あなたが憎いわけではないのです 決して
忘れ去られたこの僕が
僕自身が憎いのです
【Edit】 |  21:51 |  詩片  | TB(0)  | CM(0) | Top↑
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